美しい棚田と海、そして「豊島美術館」で癒される GWの「瀬戸内国際芸術祭」豊島(てしま)編

2022年5月10日

「瀬戸内国際芸術祭2022」2日目は豊島(てしま)へ。

こちらは直島の家プロジェクトのような、古くからの街並みを活かした作品はない代わりに、2010年に芸術祭が始まる直前に発足した「棚田プロジェクト」の活動により、棚田を中心とした美しい自然の風景が広がっていて、その一角に、それ自体がアートであると言っていい「豊島美術館」が佇んでいます。

この風景を眺め、豊島美術館でゆったりした時間を過ごす・・・ それだけで身も心も癒される、そういう島です。

GWの豊島行きはやはり混んでいた・・・

この日は朝9時7分高松港発で直島の本村港を経由して、9時57分に豊島の家浦港着の船に乗るつもりです。

高松―豊島の時刻表(芸術祭開催期間中)はこちら
芸術祭期間外の時刻表はこちら

直島の地中美術館と同じく、豊島美術館も事前予約制。10時45分入館の回なので、今日は船が到着してからあまり余裕はないスケジュールです。

ただ高松港の出発は前日の直島行きよりも1時間ほど遅いので、今日は宿泊しているホテルクレメント高松の1階レストランでビュッフェの朝食を取ってから8時20分頃ホテルをチェックアウト、徒歩で1分の港へ向かいます。

出港までには40分ほどありますが、チケット売り場にはかなりの行列ができています。
まさか乗れないこともあるのかな・・・? と思いながら列の後ろに並んでいると、ボランティアスタッフが前の方から順番に整理券を配っています。そして我々の数組前で配り切って「9時7分の豊島行きはここまでで満船です」と宣告。

ええぇ!?
と、その後続けて「臨時便が出ます。9時20分発です」との声。しかもそちらは豊島への直行便だとのこと。
もしかして、こちらのほうがラッキーか?
ということで臨時便の整理券は無事ゲットすることができて、1人1,350円のチケットを家族3人分購入。ちなみに支払いは現金のみとなります。

さて購入を終えた頃にはひとつ前の本来乗ろうとしていた便は既に船が到着しています。前日の直島行きのフェリーに比べれば非常に小さい高速船。これだと確かに繁忙期には全員乗せるのは大変そうです。

本来、唐櫃港行きの船が着くところに家浦港行きの臨時便が・・・

で、臨時便は同じ桟橋の反対側に到着。船もほぼ同じくらいの大きさ(やや小さいか)。乗り込むと船底に降りていくような感じで、シートに座ると海面が目のすぐ下くらいの高さになります。

水面は昨日に続いて非常に穏やか。それでも船が走り始めると、高速船だけあって、窓のすぐ外ではガンガン波しぶきが起きています。
なかなかの迫力です。

豊島の家浦港は直島の宮浦港よりも、高松港からの距離はやや遠いのですが、直島行きフェリーが50分ほどかかるのに対し、豊島まではわずか35分。やはり高速船は速いです。
あんまり速いので、先に出発した直島・本村港経由の船よりも先に到着してしまいます。豊島美術館の予約時間にも余裕で間に合いそう。

と、思ったのですが港から豊島美術館方面へ向かうバスがまた大行列。船の到着直後に出発するバスには乗れなかったのですが、さすがにもう慌てません。5分後に次の便が出るということで、それで十分です。
豊島のバスは1人200円。

豊島内のバスダイヤ(芸術祭期間中)
豊島シャトルバスの時刻表(芸術祭期間外)

「豊島美術館前」バス停で降りたのは10時25分頃。

バス停を降りるとそこは「絶景」だった

実はこのバス亭周辺が超絶景なのです。

まずはバス停から美術館の入口へと向かう下り坂、これが坂の先で右に急カーブしています。向こうには瀬戸内海が広がっているので、あたかもこの道が海へとそのまま続いているように見えるのです。
また、主に海に向かって左側に棚田が広がっていて、そのあぜ道を少し上ると、棚田、、豊島美術館、海を同時に眺められ、その美しさには本当に癒されます。

とにかくこの日は(前日に続いて)快晴で、空も海も真っ青、美しい風景をじっくり楽しむことができました。

写真を撮ったりぶらぶらしたりしていると予約時間の10時45分。急ぎ豊島美術館へ向かいます。
チケットセンターで予約のQRコードを読み取ってもらってチケットを受け取ったら、敷地内をぐるっと回り込む形で豊島美術館本体へと向かいます。

靴を脱いでここから中へ入っていきます

この豊島美術館、知らない方は驚くでしょうが、建物の中に何か美術品が展示されているわけではありません。いわばこの建物自体がアート、美術作品と言えるものです。
床面も屋根(?)部分もコンクリートでできた楕円のような形の建物、上部には2カ所に丸い穴が開いていて、空や外の風景を臨むことができます。

内部は撮影禁止なので 豊島美術館HPより

この美術館の特徴は、ただ建物があるだけではありません。床部分にはいくつもの小さな穴が開いていて、そこから時折、水が湧いてきます。湧く間隔は穴によって違っていて、その水はわずかな傾斜に沿って流れていきます。館内の床には2カ所、特に低くなっているところがあって、湧いた水の多くは、その低くなった部分に流れていきます。
しかし床面との摩擦によって途中で止まったり、そこへ新たな水が流れ込んで合流し、再び流れたり・・・

そういう様々な形の水の流れがあちこちで起きていて、中にいる人は皆、それぞれの場所でそれぞれの水の流れをボーっと見つめながら、静かな時間を過ごします。
空に開けた穴からは鳥のさえずりが聞こえてきます。

特別なことは何も起きない、それなのにこんなに「特別な空間」だと感じてしまうのは一体、なぜなのでしょう・・・

さて、この豊島美術館で1時間ほど過ごしたので時刻は正午前。

古民家食堂でオリーブ豚をいただく

昼食は、同じ唐櫃(からと)地区内にある「食堂101号室」を予約済み。

豊島美術館からは上り坂になってしまいますが、歩いて10分ほど。
すぐ近くには、芸術祭のアート作品でもある「島キッチン」もあるのですが、そちらは前回来た時にも利用したので今回は別の店にしてみました。

「島キッチン」と同じく、古民家風の建物。

ソファ席に案内され、ランチセットの中から「オリーブ豚と豊かな島の旬野菜のポークプレート(1,680円)」を注文、さらに瓶ビールを頼みます。
もちろん島の野菜もおいしいのですが、何と言ってもオリーブ豚。やわらかい!

オリーブと言えばお隣の小豆島ですが、豊島でもオリーブを使って育てているのでしょうか。確かにバスの中からオリーブ畑は見えましたが。

この日は東京へ帰るので、豊島出発は少し早めの15時10分。
となると時間的には島内の何らかの作品を見るのはあと一つだけ・・・ で、選んだのは、「食堂101号室」の前の道を上って行ったところにあるという「ささやきの森」に行くことにしました。

たどり着くのが大変 「ささやきの森」

歩いて片道18分・・・ ということでしたが、歩き始めると、まさかの(というか「森」だから当然なのか)全ルート上り坂。どんどん山の中へ入っていく道です。
途中、時折標識が出てきて「あと〇分」の数字が少しずつ減っていって、これはもう体力との競争という感じです。

そしてようやくたどり着いた森の中。
この作品は2016年にできたそうで、木々の間に無数の風鈴が吊り下げられています。風が吹くとその風鈴が揺れ動いて、静かな音を奏でる・・・というもの。

瀬戸内国際芸術祭2022 HPより

その音色は確かに美しい。ただ、ハエのような虫がそこら中を飛び交っていて、なかなか落ち着いて聞くことができません。5月でこれだから、夏になるともっと大変かもしれません。
森の中で無数の風鈴が美しい音を奏でる、というコンセプトはとっても良いと思うんですが、意外に厳しい環境だな・・・と思いました。

せっかく18分もかけてやってきたのですが、そういう事情もあり、時間もなくなってきたので速やかに森を出ます。
帰りは超楽ちんの下り坂。一気に出発点の「食堂101号室」まで戻り、さらにその先の「唐櫃岡集会所前」というバス停まで行くと、やっぱりバス待ちの行列。こちらも1本逃して10分後の臨時バスに乗り込みます。

家浦港に到着すると、早くも高松行きの便が行列に。朝と同じようにスタッフの方が前方から整理券を配っていきます。
と、ここで小さな奇跡が!
何と、ちょうど自分のところで整理券が終了してしまったのです。
後ろの人たちには臨時便があることを告げるスタッフ、しかし今回の臨時便は1時間半後・・・

この日は本来の便を逃してもすぐ後に来る臨時便に救われてきたところ、最後の最後で乗るべき「本来の便」に滑り込めた、本当にラッキーでした!

というわけで豊島は、ほぼ豊島美術館のみの訪問になってしまいましたが、十分充実した1日、とにかく空と海がずっと青くて最高の「豊島日和」でした。

旅行

Posted by ブラックバード