「ぺーパー・ハウス・コリア」には”愛”が足りない!? スペイン版と比較 南北問題絡めてヘヴィに

2022年7月1日

Netflixで配信中

Netflixで「ペーパー・ハウス・コリア」の配信が始まりました!

スペイン版「ペーパー・ハウス」に、ドハマりしていた私としては、あのストーリーをアジアに落とし込んで、アジア人が演じるとどうなるのか?というのは非常に気になるところです。

早速、「エピソード2」まで見たところでこれを書いています。スペイン版のエピソード数を考えると、まだまだ先は長いのですが、ここまでのところ、はっきりとした違いは・・・圧倒的に恋愛要素が少ない!

スペイン版を見ていた時には、犯人グループ、人質、刑事、それぞれが様々な恋愛模様の中で生きていて、日本人的には「おいおい、そんなことしてる場合じゃだろ!?」と思うことが多々、本当に多々あったんですが、それが排除されてしまうとそれはそれで寂しいものだなぁ・・・というのが主な感想です。

以下、スペイン版の内容にも触れています(ネタバレ的な部分もあり)。ご注意ください。

度肝を抜かれた、南北朝鮮”ほぼ統一”という設定

まずおことわりしておくと、私は韓国の連続ドラマはほとんど見たことがありません。唯一最後まで見たのは「イカゲーム」ですね。「愛の不時着」も「梨泰院クラス」も見ていません。(「冬のソナタ」も、通しでは見てませんし)
というわけで韓国ドラマに特に思い入れもなく、今回このドラマを見てみたのも、あの名作「ペーパー・ハウス」をどのようにリメイクするのかという関心のみです。

なので今回は、オリジナルのスペイン版と韓国版、どこが同じでどこが違うのか・・・というのを確認していきたいと思います。

まずは舞台設定。
韓国版のスタートは度肝を抜かれましたね。いきなり南北朝鮮が“ほぼ”統一されて、互いに行き来するようになるんです。想像するに、これこそネトフリ側が、「ペーパー・ハウス」のリメイクを韓国に許した最大のポイントではないでしょうか。
ネトフリにしてみたら、スペインと韓国で文化も生活様式もかなり違うとはいえ、同じ設定、同じストーリーのドラマを、同じプラットフォーム内に新たに置くというのは、かなり勇気がいることだと思います。となると企画段階で、韓国が舞台だからこそできる設定についてアピールが必要で、「南北統一」というのは強力な材料だっただろうと推察します。

エピソード1ではこの設定をしっかりと構築していきます。
強盗チームが襲う造幣局は、南北の共同経済区域(JEA)にあり、紙幣は新たに発行された「統一紙幣」。これを大量に刷るわけです。
一方、登場人物も韓国と北朝鮮で出身が半々という感じ。トーキョーとベルリンは北、オスロとヘルシンキはスペイン版ではセルビア出身の外国人でしたが、韓国版は中国出身。残りは南の人たちです。造幣局内の不倫も、男が韓国人、女は北の出身で、結婚して家族を南に呼びたいと願っています。

この南北問題が、ドラマ全体のトーンに、スペイン版とは違う、「暗さ」というか「重さ」を与えています。
とにかくスペイン版がいかに能天気だったか、と改めて思います。“お尋ね者”だというトーキョーの境遇は同じでも、かたや強盗に失敗して恋人を殺されたスペイン版では、「パルプフィクション」みたいな派手なイメージがあるのに対し、韓国版のトーキョーは、北から南に来てみたけども、虐げられ女を売りにする仕事をさせられて雇い主を射殺して逃亡したあげく追い詰められ・・・という感じで非常にヘヴィです。

スペイン的「アモール」は登場するのか?

そして・・・
何と言っても韓国版は「愛」が控えめ。スペイン版ではすでに準備段階でリオとトーキョーが恋仲、当初からそれが足を引っ張って、作戦が立て続けに失敗し、教授から「君の恋は計画を破壊する」なんて言われますが、韓国版はどうやらこの2人はくっつかなさそう。(まだわかりません)

また計画に利用するために、教授が交渉役の刑事に近づくのは同じですが、スペイン版では2人が本気で恋に落ちてしまうのに対し、韓国版では教授側はあくまで「利用」と割り切っているようだし、女性側も仕事の邪魔にならないようにと配慮している感じがあります。(スペイン版ではお互い「邪魔」になりまくりでしたからね!)
この分だと、デンバーと「ストックホルム」の恋も、果たして発生するのかどうか。

でも、この控えめ感が普通だとは思います。
南(韓国)の人は多少、軽めに描かれていますが、北の人は、そうそう簡単に心を許したりしないだろうし、許したとしても、不倫している女性のように、思いつめる感じになってしまうと思います。

むしろスペイン版があまりにイージーというか、ラブ(アモールか)ありき、過ぎたんですよね。犯人と人質がそんなに簡単に恋に落ちるか、とか、立てこもり継続中にいくら何でも刑事と恋に落ちないだろう、とか、ラテンの人たち以外にはきっと理解できない・・・アメリカ人だってツッコミを入れるんじゃないかと思うくらい、犯行そっちのけで「アモール」してましたから。

ただ、そういった恋愛模様がスペイン版のストーリーを思わぬ方向に動かし、ハラハラ感を生み出し、カタルシスを作り出していたところはあるので、果たしてそういう要素が薄めの韓国版で、今後、どう盛り上げていくのか。

ところで、エピソード2に入って、ベルリンとデンバーの雰囲気が、かなりスペイン版に近づいてきた感じがあります。ベルリンと言えばスペイン版では当初、キレやすいただの「変態」だと思っていたのが実はかなりのインテリで、誰よりも愛を求めていた屈折したキャラであることがわかってきて人気が急上昇、シーズン3以降は主人公並みの扱いを受ける人物です。
北朝鮮の過酷な刑務所生活を生き抜いてきたという韓国版のベルリンは、一体どんな素顔を見せるのか。

という感じで書いてきたわけですが、そもそもストーリーがほぼ同じであろうリメイク版を、今後見続ける意味はどこにあるのかとも考えます。「おお、そう来たか」とか「えー、そこでこの人が?」みたいな新鮮な驚きが果たして待っているのか?

2話目にして、スペイン版に近づいているように思える韓国版。
現時点の配信はエピソード6まで。オリジナルの「造幣局強盗」は2シーズン、全22エピソードまであったので、韓国版は、やや進行が早いとはいえ、まだまだ先は続きます。

途中で離脱しない自信は全くありませんが、何とか韓国版のオリジナリティを出していってもらって、見続けるモチベーションが維持できればいいなと願います。