「このミス」第1位はやはり容疑者のキャラが強烈すぎるあの作品 「岸辺露伴」特集も充実!

「このミステリーがすごい!2023年版」が発売されました。
年末になると様々なミステリー・ランキングが発表されるが、やはり「このミス」が最も信頼できる・・・と思います。

そして、その国内部門第1位に見事、私イチ推しの呉勝浩「爆弾」が輝きました。
おめでとうございます!
文春ミステリー・ランキングでは4位だったので、ちょっとがっかり気味だったのですが、やっぱり「このミス」ですよ。

ということで、今回は「このミス2023」の国内ランキングを紹介していきます。つまり「ネタバレ」になってますのであらかじめご了承ください。

荒木飛呂彦さんはミステリーマニアだった

今回のこのミス、表紙は何と岸辺露伴!
漫画家・荒木飛呂彦さんの生み出したキャラクターで、NHKのドラマでは高橋一生さんが演じて話題になりましたよね。

で、なぜ岸辺露伴が「このミス」に登場するかというと、彼が活躍する「ジョジョの奇妙な冒険」やスピンオフの「岸辺露伴は動かない」が、「ミステリーファンから熱い支持を受けている」というんです。

確かに「ジョジョ」には「この中でスタンド使いは誰だ!?」みたいな犯人探しや、「敵のスタンドはどんな能力なんだ?」という凶器や犯行手段を推理する、みたいなミステリー要素が詰まっています。
荒木さんも巻頭のインタビューで「『ジョジョ』はミステリーですから」と断言しています。

荒木さん自身、かなりのミステリーファン。
原点はシャーロック・ホームズシリーズだそうで、そのほかにも「ジャッカルの日」とか「幻の女」といった海外ミステリーから横溝正史や松本清張など国内ミステリーまで、かなりの読書家だったようです。

本の中ほどには、荒木飛呂彦作品を愛する作家が語る・・・ということで伊坂幸太郎さん、辻村深月さん、法月綸太郎さんが登場。
かなり充実した荒木作品の特集になっています。

呉勝浩さん 驚きの小説作り 

ということで、「ジョジョ」ファンの方も楽しめる今回の「このミス」、いよいよ2022年のランキング、国内編をご紹介していきましょう。

1位は既にお伝えした通り、呉勝浩「爆弾」。

謎の中年男、「スズキタゴサク」の存在感がすごい!
取調室でひたすらしゃべりまくる。その言葉の中に、仕掛けられた爆弾に関するヒントが隠されている。果たして刑事たちはそれを見抜けるか・・・
今年前半のNo1ミステリー 呉勝浩「爆弾」は私たちのエゴをえぐる問題小説にして最高のエンターテインメント

取調室での刑事と容疑者との攻防を描いた小説は数あれど、この「爆弾」の読後感はあまりに独特で、よくこんなものを作り上げたな、と作者の才能に脱帽してしまうのです。

実は「このミス」では1位になった作品の作者にインタビューするのが恒例になっていて、当然今回は呉勝浩さんが「爆弾」について語ってくれています。

それで初めて知ったのですが、驚くべきことに呉さん、プロットをほとんど決めずに書き始めるんだそうです。つまり書き始めた時には結末がどうなるか、まったく決まってないのだとか。

だから登場人物についても「登場した瞬間に初めて思いついた人物」なのだそうです。
スズキタゴサクも、「何をやろうとしているのか、何もわからないまま書き進めて」いたそうで・・・(笑)

それでよくまあ、こんな伏線を回収しまくる複雑なストーリーが書けるものです。やっぱりすさまじい才能です。

2位以下も必読の作品ばかり

さて、続く2位は白井智之の「名探偵のいけにえ」。
未読です。あらすじなどを読む限り、かなり本格ミステリー系なんですかね。読んでみたいです。

そして4位に夕木晴央の「方舟」(既読)が入っています。
「文春ミステリー・ランキング」では見事1位だったんですが・・・ちなみに「文春」では「爆弾」が4位だったので、ちょうど入れ替わってる形ですね。
確かに面白かったし、ラストの衝撃度はかなりのものでしたが、やはり「爆弾」と比較するとね~ というところでした。
衝撃のどんでん返し 夕木春央「方舟」は本格ミステリー要素を詰め込んだ快作

5位の長浦京「プリンシパル」も今後読んでみたい作品です。
6位、佐藤究「爆発物処理班の遭遇したスピン」。あの「テスカトリポカ」の作者なんですね!? となると、これも必読です。

7位の逢坂冬馬「同志少女よ、敵を撃て」(既読)は、アガサ・クリスティー賞受賞作だから入ってきたのでしょうか、ちょっとミステリー感はない小説だったですね。
ただし戦争冒険小説としては大傑作です。

9位、小川哲「地図と拳」。これもまた、あの「君のクイズ」作者の作品。読まねば・・・

「このミス」国内ベスト10はこちら

というところで、「ベスト10 国内編」は以下のようになっています。

1位  爆弾 呉勝浩  講談社
2位  名探偵のいけにえ 白井智之  新潮社
3位  捜査線上の夕映え 有栖川有栖  文藝春秋
4位  方舟 夕木春央  講談社
5位  プリンシパル 長浦京  新潮社
6位  爆発物処理班の遭遇したスピン 佐藤究  講談社
7位  同志少女よ、敵を撃て 逢坂冬馬  早川書房
8位  大鞫家殺人事件 芦辺拓  東京創元社
9位  地図と拳 小川哲  集英社
9位  奥田英朗 リバー  集英社

毎年そうなんですが、並べてみると、どれも読んでみたくなりますね。
しばらくは読む本に困らなさそうです。