「黄金の花はいつか散る」 ライブ居酒屋で沖縄の歌を聞く

伊良部島(宮古島)~沖縄本島の旅も5日目。
この日の夜は、「ハレクラニ沖縄」から道を渡ってほぼ正面のライブ居酒屋「歌物語本店」です。

ライブ系の店は今回、3店目。
最初は宮古島の民謡の店、2つ目も同じく宮古島ですがこちらは「花」など割とポピュラーな曲も披露する店でした。
これまでの2店は三線と太鼓という組み合わせだったんですが、「歌物語本店」は歌い手ひとりが三線とアコースティックギターを使い分けながら、客からのリクエストに応じてポップス系の曲も歌ってくれるという店でした。

「涙そうそう」から かりゆし58まで

入店は夜7時。到着したときにはほぼ満席という盛況でした。ほとんどがハレクラニの客なのでしょうか・・・ 私たちは予約していたこともあってか、「ステージ」に一番近いテーブルに案内してくれました。
ライブは7時半開始ということなので、いつものように海ぶどうや島らっきょうを食べながら待ちます。

いよいよ時間となり、登場したのは帽子にTシャツ、ジーンズにスニーカーというお兄さん。いかにも沖縄系ミュージシャンという感じです。彼が客にリクエストを呼び掛けると、あちこちから手が上がります。皆さん、こういう店だと知っていて、あらかじめリクエスト曲を考えてきている感じですね。

まずは定番の「涙そうそう」、さらに「三線の花」を三線で弾いた後、アコギに持ち替えて、かりゆり58の曲を2曲弾いてくれます。
かりゆし58って、ほとんど聞いたことがなかったんですが、バンド名の「58」は国道58号線のこと。正に店の前を走っている道路です。
なおこの国道58号線、那覇市から奄美大島、種子島と通って鹿児島市まで伸びる日本最長の「海上国道」なんだそうです。実際はフェリーを使わないと鹿児島まではいけないんですが。

そして、かりゆし58の「かりゆし」のほうは、沖縄の言葉で「めでたい」みたいな意味だそうで。
ここで歌われたのは、「アンマー」と「オワリはじまり」の2曲。初めて聞きましたが、特に「オワリはじまり」、いい曲ですね。

そして最後は定番の「オジー自慢のオリオンビール」(これも客からのリクエスト)でこの回の締め。曲の後半で繰り返される「あり乾杯」で、店全体が合唱で盛り上がるというのがお約束です。

さて、2回目のライブが始まる前に食べ終えて帰ろうと思っていたんですが・・・

「やんばるくいな」のロック

そーみんチャンプルーを食べ、酒は泡盛「やんばるくいな」のロックを頼み・・・ するとなぜか店員が間違えて泡盛が2つも届いてしまい、せっかくだから飲んでしまおう、とタイミングを逸する間に、本日最後の、ライブ演奏が始まってしまいます。

「黄金の花」の歌詞に思う

こうなったらもうリクエストするしかありません。
客のひとりが「花」をリクエストしたのに続いて、すかさずネーネーズの「黄金(こがね)の花」をリクエストします。マイナーな曲でちょっとドキドキしましたが、「何ですか、それ?」と聞かれることもなく、「花つながりですね」と受け入れてくれました。

この「黄金の花」、1994年の曲なんですが、当時、TBS系の「ニュース23」のエンディングテーマになるなど、そこそこヒットした記憶があります。自分もサビのメロディーが好きで、よく聞いていました。
ただ、30年近く前の曲、いまや沖縄以外の地域では全く聞かれませんよね。だからすんなりリクエストが受け入れられた時にはホッとしました。

ということで正直、自分も数年来聞いてなくて、歌詞の内容も朧だったんですが、歌い手のお兄さんが説明してくれたことによれば、沖縄から東京を始め本土の各地に散っていく若者たちへ、沖縄の心を失わないように呼び掛ける詩、なんだそうです。
お兄さん自身も一時期東京に行って再び沖縄に戻ってきたのだということで、身につまされる詩だったようです。

「黄金の花」

黄金の花が咲くという 噂で夢を描いたの
家族を故郷、故郷に 置いて泣き泣き、出てきたの

素朴で純情な人達よ きれいな目をした人たちよ
黄金でその目を汚さないで
黄金の花はいつか散る

作詞:岡本 おさみ
作曲:知名定男

改めてこの歌詞を聞いて・・・ 
うがった見方をするとこれは、基地問題を始めとして本土の意向に翻弄されてきた沖縄全体への思いを込めた歌なのかもしれないと思ってきました。様々な補助金が投下される沖縄、でもそういう「黄金」に騙されないで、そんなものは一時的なものだから・・・と警告しているのではないでしょうか。

いずれにせよ、今回行ったライブ系の3店は、まあ観光客対象の店ではあるのでしょうが、改めて沖縄と音楽との結びつきを強く感じることができて、心に残りました。

沖縄の夜は是非、ライブ系居酒屋に行ってみてください!